◆ 2003.08.23 Sat

デュ・プレという名の花

花の名前はいろいろあって中には人の名前を冠したものもある。

音楽家の名前が付いた花もいくつかある、僕が知っているのはジャクリーヌ・デュ・プレ、サー・エドワード・エルガーの二つ。

ちなみにジャクリーヌ・デュ・プレの咲き方の特徴は「返り咲き」、彼女が不治の病でそれこそ「返り咲き」できなかったことを考えると、なんだか少し考え込んでしまうのは僕だけだろうか?

デュ・プレの人気は衰えることを知らない。最近では「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」という映画が放映されたのをきっかけに再び彼女にスポットがあてられるようになった。

この映画はいわゆる身内の暴露ネタを題材にしたスキャンダル映画、突発性硬化症に苦しんでいた彼女はもともと情緒不安定な人間だとか、姉の夫と不適切な関係を持ってたとか…そんな「人間」としての側面、「演奏家(天才チェリスト)」という顔の裏側にある彼女が描かれている。

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とはいってもこの映画の原題は「ヒラリーとジャッキー」、つまり実際は姉ヒラリーと妹デュ・プレが対等に描かれている映画だ。「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」という邦題はちょっとずれていると思う、デュ・プレのスキャンダル映画として売り込もうという商業的意図が垣間見えてなんだかいやらしい。

ロストロポーヴィチを始めとする音楽家達は映画公開に反対したという。私生活を知ったところで、彼女の音楽に余計な先入観を与えるだけだ。ただでさえ彼女の人生の「悲劇性」に酔って音楽そのものを聴かない人は多いのだから。

この映画を観るよりは「ジャクリーヌ・デュ・プレの想い出」という映像作品を観てほしい。インタビューと演奏シーンで構成されたドキュメンタリーで、「演奏家」としてのデュ・プレに焦点をあてたものといっていい。それ以上踏み込んだって意味が無いと思う。芸術家のプライベートなんて普通じゃないのが当たり前だ。

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◆ 2003.08.22 Fri

「火垂るの墓」

火垂るの墓を観て号泣してしまった。

初めてこの映画を見たのは小学生低学年の時、僕は途中で「帰りたい」とごねて親は仕方なく映画館を出たという。最初の全身に火傷を負った母のシーンでショックを受けたらしい。そう、当時の自分にとってこの映画は「怖い映画」でしかなかった。そんな映画を昔よりもずっと大人になった「自分」が観ている。

「この映画が訴えるのは反戦ではなく厭戦なんです」

原作者の野坂昭如さんがそんなことを言っていたのを覚えてる。今回はその意味が改めてわかったような気がした、悲しかった。

冒頭で既に予感される節子と清太の運命、そこには何の救済も無い。母の遺骨を持って帰ってきた清太に節子が「お母さんは?」と訊く、4歳の節子と14歳の清太にとっては余りにも辛い現実がそこにある。節子が母親の形見の着物を売らないでと訴えるシーン、

「おかぁちゃんのおべべあかん!おかぁちゃんのや!」

そこで最初の涙がこぼれた、映画で泣いたのは久々だった。正直、僕の父を亡くした経験がオーバーラップしたせいもあった。

戦争の無い世界にとっては非日常な「日常」がそこに描かれている。サクマ式ドロップの缶に水を入れ、少しだけ甘くなった水を飲み干す節子…その後に見せる笑顔、涙なしには観ていられなかった。

いうまでもなく節子の関西弁もツボである、本当の子供を声優で使ったのは正解だ。蚊帳の中で壺に閉じ込めた蛍を放つあの有名なシーンはやっぱり印象的だった。母の死を受け入れた4歳の節子が蛍の死骸を生めながら呟く、

「蛍の墓つくってんねん…お母ちゃんもお墓に入ってんねんやろう。」

「なんで、蛍すぐ死んでしまうん?」

節子は幼いながらにも自らの「運命」を「死」を見つめる。「おおきに…」その一言を残し、節子はひっそりと死を迎える。リヤカーで節子の遺体を運ぶ清太と、我が家に戻り嬉々とする少女たち。この対照的な描写は本当に見事だなとしみじみ思った。更にそこで流れるHome Sweet Homeの鄙びた旋律。泣かないようにしようと思ったのに結局は泣きっぱなしだった。

感想聞いてると「叔母の家にいておくべきではなかったのか?」とか、「清太が自らの我が儘で、自分の妹まで犠牲にするのは戦下であろうと許されない。」みたいなことを言ってる頭の悪い人間がけっこういて驚く。

そういう現代の「価値判断」で当時を見る視点自体わけがわからない、その「価値判断」そのものを狂わせてしまうのが戦争なのに…野坂ちゃんの伝えたいこと一つも読み取れてない人の意見だ、なにかがズレていると思う。

因みにこの作品は野坂さんの体験を元に作られた話である。 幼い妹を自分で火葬にしてドロップ缶にいれて持ち歩いた話は実話だという。


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