◆ 2005.11.30 Wed

Mum Live@O-East

mumのライブ@O-Eastに行ってきた。

気合いを入れて整理番号30番のチケットを取ったのだが、実は後からオーケストラのメサイアの先生tuttiが入ってしまっていたのだった…しかも練習時間は17時〜20時。コンサートマスターなのでどうしても練習を休むことはできないし、一度はチケットをキャンセルしようかなと迷ったけれど、意を決して練習後にライブに直行するという荒業に挑戦してみた。

練習が予定よりも早めに終わったので、O-Eastには20時過ぎに到着することができた。19時半開演で最初はFleckfumieのゲストライブがあったので、幸運にもmumの方は殆ど聴くことができた。でもクロークに荷物を預けることが出来ず、ヴァイオリンケースをもったまま会場入りすることに。(笑)スタンディングだったので場所は後ろの方だったけど、O-Eastはそんなに大きな会場ではないのでステージがよく見えた。

まずは生mumが目の前にいるというその事実だけで、胸の奥からグッと込み上げるものがあった。クリスティン可愛いかった。ライブの方は今までリリースされている三枚のアルバムからの曲がまんべんなく散りばめられた感じ。(詳しいセットリストまでは思い出せない…)

まるでリハーサルのようなフランクな雰囲気で進んでいくセッションがとても素敵だった。クリスティンが機材を勝手にいじくってハウリングをわざと起こして大喜びしてたり、遊び心が満載で面白かった。

一番感動したのはクリスティン・アンナの歌声の美しさ!こういう系のバンドは生で聴くと声がCDのものと違っていて幻滅なんてこともよくあるが、クリスティンの声は生でもノーエフェクトとは思えない位に美しく、繊細な表情に満ちていた。

何よりmumのライブの面白さは多種多様な楽器のコラボレーションにあると思う、アコーディオンにトランペット、ヴァイオリン、ピアニカ、ハンドベル、琴、鉄琴、のこぎり(!)…などなど、エレクトロニカに絶妙に溶けていくその「音使い」はさすがという感じだった。

個人的には曲がまだ終わってないのにインサートのところで拍手する客が何人かいてちょっと幻滅、「お前らCDちゃんと聴いたことないだろ!」って。それに写真撮るにしてもフラッシュは止めて欲しかった、あと演奏中にベラベラ話すのもいただけない…喋るなら外に行けよ!という感じ。

最近どこのライブにいっても観客の質の悪さが目に付く、日本のオーディエンスの質は明らかに落ちていると思う。特に今回のmumのライブはずっと心待ちにしていただけにちょっと残念だった…。

でも改めてmumは素晴らしいなと思った、こんなに胸にスッと染みて感動できるライブは久しぶりだったと思う。ライブを主催してくれたAFTER HOURSには感謝。

最後の最後にメンバーが“see you again very soon!”と言っていたので、近いうちにまた来日しそう。楽しみ。
◆ 2005.11.23 Wed

何のために書くのか?

サイトに遊びに来てくださった方から、こんなメールを頂いた。

日記、拝見させていただきました。とても丁寧な日記ですね。読み易かったです。ものすごく素敵な日記に仕上がっていて、とても羨ましく思いました。私も、こんな素敵な日記が残せられればいいなぁ、と思っている次第です。

自分では好き放題書いているだけのつもりだったので、丁寧だと誉められてちょっと恐縮してしまった。それから僕自身はここに「日記」を書いているという意識はなかったので、「日記」という言葉が使われていたのも新鮮だった。良い機会なので、このMemorandumに「文章を書く」という行為について改めて考えてみたいと思う。

かつての自分はこのことについて次のように語っている。

僕はその時にあった出来事より、その時考えた事、感じた事に主眼を置いていて、いわゆる「日記調」にならないよう常に気を付けている、「今日は〜した」の羅列で出来た文章は他人からみたら退屈だから。

僕は純粋なdiary(日記)というコンテンツを置く感覚がよくわからない、日常を「そのまま」垂れ流すのは文章として無価値に思えてしまう。「伝える」という行為と日常の垂れ流しは結びつきにくい、文章を書く目的が不明確過ぎるからだろう。

誰でも「文章は伝えるもの」という認識は持っているが、その対象が「自分」だけになってしまいがちなのかもしれない。自分にとっては「覚え書き」になるくらいが良いと思いながら僕は文章を書いている。これからも読んだ人に何か伝えられるような文章を書けたらと思う。

読んでの通り、「文章は伝えるもの」という原理に基づいて、読み手に何かを「伝える」ような文章を書こうと考えていたのがお分かりいただけるかと思う。しかしながら、改めて読み返してみると、この文章にはどうにもしっくり来ないところがある。僕が「読み手(他人)になにか伝えよう」などという、特別な使命感をもって文章を書いているかといえば、その答えはノーである。

僕は上手な文章は書けないし、物書きのプロでもなければただの一般人である。極論をいってしまえば、僕にとって「文章を書く」という行為は完全に「自分のため」の行為である。もっと説明的にいうと、未来の自分が過去の自分を振り返ったり思い出したりするもの、誰かに読ませるためでもなく「自分自身」が過去の自分を振り返るために書いているというわけだ。

日記―この言い方が僕はどうも好きになれなくて、自分では後から振り返るためのものという意味合いを込めて「覚え書き(Memorandum)」と名づけている――というものも、その起源を探ってみるとやはり「自分を振り返るため(自分の為)」という目的から生まれたようだ。紀元前にソクラテスが、自分の行動を振り返るために始めたという話をテレビで目にしたことがある。

この文章を打っていたら、何故僕が「日記」という言葉が好きになれないかが分かってきた。「日を記す」だけ、つまり「日記は書いて終わり」という印象を無意識に持っていたからなのかもしれない。実際ネット上などを見ているとそういう人が多いのではないだろうか。僕は「書き捨て」にはしたくない、「未来の自分」に「今の自分」が何を感じ、何を思ったのかを正確に伝えたいと思っている。

自分が昔書いた文章を読み返したときに、まるで「他人」が書いた文章のように感じたことが誰しもあるだろう。つまり、「未来の自分」に読ませるということは「他人」読ませることと同じだ。そういうわけで、僕は自分にとっても他人(未来の自分)にとっても読みやすい(振り返りやすい)日記を無意識に書こうとしているのではないかと思う。
◆ 2005.11.22 Tue

ヴァイオリンは3歳から?

「ヴァイオリンは小さい頃から習わないとダメだね…」

そんなことを請け売りのように口にする頭の悪い先生やヴァイオリン弾きは沢山いらっしゃるが、それは「プロを目指すならば」という前置きがつく場合であって、僕は絶対にそんなことはないと思っている。

要は「やる気」の問題だ、もっと正確に言うと「本気で向き合った期間」。ダラダラと何となく「習い事」みたいにヴァイオリンを続けている人よりも、経験は短くても夢中になって弾いてきた人の方が、音楽に対するパッションもあるし素敵な音楽を作れると僕は思っている。実際にそれを痛感した経験も多い。

僕の後輩や友人にも、高校から楽器を始めてそのまま音大に行ったという人も何人かいる。思えば僕の大好きな指揮者の一人、カルロス・クライバーも特別な音楽教育を受けることなく音大にも進まずに工科大学に進学して、音楽の勉強を独学で始めたという。そういう人たちを見ていると、本当に音楽(楽器)は年数じゃないんだなぁと思う。

加えて言うなら、「我流」というのも全然アリだと思う、良い先輩と環境があれば、レッスン無しでもそれなりのところまでは誰でも行ける。加えて、それなりの音感、センス、音の妄想力がある人は先生につかなくとも、もの凄い勢いで上達して音大生と遜色ないようなプレイヤーに育ってしまうのだから面白い。

そうは書いてみたものの、もちろん我流にも「限界」はある。良い先生が見つかったならば、絶対に先生についた方が良い。



僕はオケのセカンド・ヴァイオリンという役回りが好きだ。

オクターブでファーストヴァイオリンを支えたり、リズム隊の最高音としてリードしたり、オーケストラの「巧み」が凝縮されたパートだと思う。音域も中低音だから鳴りにくいし、アンサンブルもきわどいし、セカンドはファーストよりも経験が必要だし難しいなと思う。

実際、プロオケでも若い演奏者は最初にファーストに回される事が多く、セカンドはベテランが集められている事が多いみたいだ。「高音が多い=難しい」というのは全くの誤解であり、いかにもアマチュアらしい偏見だなと思う。「音が出せる」ことと「表現できる」ことはイコールではない。

ああ、なんだかこんな話をしていたらセカンドヴァイオリンがやりたくなってきた。でも来年の三月まではコンマスなのでずっとファースト…がんばるぞ。
◆ 2005.11.10 Thu

コンマス→指揮者?

ある方から、こんな質問が寄せられた。

私の知り合いの方は、バイオリン(3才から)→コンマスだったのですが、指揮者になる為に、国外の音大にも行きたかったようです。

taxiさんも指揮者には思い入れがあるようですが、やはり、コンマス、コンミスの方は次は指揮者になりたいモノなのですか??確かに、コンマスから指揮者という経緯も結構聞きますが。

今まで考えた事も無かったような質問で、非常に面白いと思ったので、回答をここにも書いていきたいと思う。

まず結論から言ってしまうと、コンマスが指揮者になりたがるというのは一般論とは言い難い。コンサートマスターともなると殆どの人はヴァイオリンの腕が達者なので、「弾く方が良い!」と思っているのが現状だ。ただし、僕はそんなに腕の立つヴァイオリン弾きではないので、「振る方が楽で良いなぁ…」なんて言っていることもしばしば。(笑)

ちなみに僕の場合はコンマスになる前から指揮者にはなりたいと思っていたので、実は順序が逆だったりする。もっというと、コンマスに関しては「なりたかった」というわけではなく、憧れや願望よりも「使命感」に動かされる形での就任だった。つまり「オケを変えたい(良くしたい)→運営も音楽にも関われるポストにつかなければ変えられない→コンマス」というプロセスなので、元々は「手段」としてのコンマスだったといっていいかもしれない。

コンマスから指揮者になった人もいるにはいるが、プロの世界全体で見ると意外と少ないと思われる。オケの演奏者から指揮者になった人が一番多いパートは、恐らく「コントラバス」ではないかと思う。ベースという楽器はいつもオケ全体を俯瞰する位置にいて、音楽全体のファンデーションとなる役をこなしているので指揮者の感覚に近いものも感じなくはない。

ただし、コンマスに「指揮的な視点」が必要であることは事実である。スコアを分析して弦のみならずオケ全体に耳をそばだてて、管打楽器にも指示を飛ばしたりするし、常に指揮者的な役割の一端を担っているといって良いだろう。だからこそ、指揮者がコンサートマスターに解釈やテンポを相談したり、時には決定権与えることさえあるわけだ。

とはいっても、そこら辺をよく理解していなくて、「自分が上手く弾けているかどうか」とか「ヴァイオリンパートが上手く弾けているかどうか」とか…その程度のことしか頭に無いナルシスト的で自己満足なコンマスが多いのが現状である。(特にアマチュアオケのコンマスなどを見ているとそういう人間が多くて呆れてしまう)

余談だが、そういう人を業界では皮肉って「コンサート・マスターベーション(略してコンマス)」と呼んでいる。もっと言うと、可愛いキャラ(容姿)のコンマスさんは愛を込めて「コンサート・マスコット(略してコンマス)」と呼ばれたりもする。人間にも色々いるように、コンマスにも色々いるというわけだ。
◆ 2005.11.01 Tue

ソロとオケの違い

プロの演奏家の方が「ソロの音量は濃淡だけで十分なんだ」と言っていた。

ここでいう「濃淡」というのはいわゆる音色のことだ。もっと具体的にいうとフォルテは濃い音色で「大きそうな音」を出し、ピアノは薄い音色で「小さそうな音」を出すといった感じだ。デシベルに換算した場合、その二つの音量はそれほどかわらないんだそうだ。

ソロを演奏するときにオーケストラの中で弾くような感覚のままでピアノを出すと、それでは音量としてはあまりに小さくか細すぎる。そこでソリストは「濃淡(音色)」を上手く使って、「小さそうな音」を作り出すわけだ。これを僕は「ソロ・ピアノ」と呼んでいる。

僕の言う「引き出しの多い演奏者」はそこをよく理解していて、ソロとオケで明確にスタイルを切り替えて演奏できる。しかし多くの弦楽器奏者の音楽の出発点はいわゆる個人レッスンであり、オーケストラの技術はその次という感じになる。もっというと、オケで弾く機会に(不運にも)巡り合わなかった人間は、一生その技術を学ぶことがないかもしれないのだ。

実際に音大生と一緒に演奏していて、そういう方に出くわした経験が何度かあった。もちろん技術レヴェルは高いし、よく弾けているのだがピアノになると音色が周りに溶かせず浮いてしまったり、弾きすぎていたりしていてなかなかひどいことになっている。もっと困るのはマイテンポでガンガン弾いてしまうアンサンブルできないタイプ、ソロの時はピアノ伴奏の方がそれにぴったり付けてくれたのかもしれないがオーケストラの中ではそうはいかないのだ。

「音大にもオケの授業はあるじゃないか」といわれる方がいらっしゃるかもしれない、しかしながらその実情は実際に音大のオケを聴いてみれば明らかだ。個人個人は素晴らしい音を出して演奏いるのはよく分かるのだけれど、トータルとしてみるとまとまりのない音楽になってしまっていることが多い。

出来損ないのサイトウ・キネンのようなオケに出会う度に、なぜかアイロニカルに「ソロの音量は濃淡だけで十分なんだ」という言葉を思い出す。それは確かにそうだが、ソロとオケの区別ぐらいはして欲しいなと思う。オケでは良い意味で「己を殺せる」人が集まると上手く行く、「己を生かすこと」ばかりに夢中になる演奏家は邪魔だなぁと思う。

難しい、奥が深い。これだからオーケストラは面白い。


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